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 女のいない男たちを一晩かけて読み終えました。読み終えてなんと伝えたらよいのか、感じたままに書き綴ってみようかと。

 女のいない男たちは日常の生活の中で決して女性と肉体の関係がないというわけではなく触れ合う機会がないわけではありません。ただ人生のある時期が転換期となり大切な女性を亡くしてしまった、表現しがたい何者かに連れ去れてしまった、見えない何かに巻きつかれてしまった、心にひびのようなものを作ってしまった男。その心情にはなんとなく共感する部分、日常生活で実感する部分もあり、その中で男は今の生活に流される、一方では今の生活と決別してしまう男がいるということ。
 ただそれはどちらをとったとしても決して明確には間違いとはいい難く答えがでてこない日常でその迷いやわだかまりのような心情に包まれて流されていく、なんとなくではありますが共感を感じさせてくれました。また女性の見方にもさまざまな視点から見つめており、一方では『蛇』であったり、他方では『やつめうなぎ』だったり、女性とは『独立器官を持っている』と日常でそう見えてしまう瞬間の著者の文章表現には驚きを感じさせてくれると共にそういった瞬間があることを思い出させてくれます。

 この短編小説は読み進めていくうちに次の短編へと引き込む魅惑的なものをもっています。
小説の一節に『女のいない男たちとは淡い色合いのペルシャじゅうたんにボルドーワインの染み』というフレーズがありますが、これは村上春樹氏の世界観や人生観を感じさせてくれたとともに私自身の生活に少しだけ深みのある色彩を与え『感じること』を思い出させてくれたような気がします。